SKK AP
2015
入居者同士の程よい距離感で安心を生む賃貸住宅
同じ屋根の下、賃主、入居者同士が程よい交流で、安心感のある暮らし。
―フルキスペースデザイン(以下FSD)に決めたきっかけは何でしょうか?
Kさま(以下K):急きょ、母親と同居することになり、だったら賃貸併用住宅にと実家を建替えました。
個人建築家、デザイン工務店など十数社の担当者と会って、最終的に5、6社からプランを頂いたんですね。
そのときに、RC造とプラン提案、総工費、そして会社自体の考え方が良かったので、全体のバランスがとれていると思えました。
―どんなプランだったのですか?
K:たいていの会社は、賃貸部分には一番効率のよい単なるワンルームの提案が多かったんですね。
でも、私は収益性のみの造りでなはく、借りる人も住んでいて心地よく、引っ越すときに、「ここの賃貸物件はいいよ」と他の人に言えるくらいのものにしたかったんです。
そして、貸す人、借りる人だけのつながりではなく、どうせ同じ屋根の下に住むなら、交流がしやすいような住宅がいいと。その思いを汲んでくれた提案でした。
―決めてからどのくらいで竣工したのですか?
K:いろいろやりとりしながら、1年くらいですね。
―Kさまの場合は賃貸併用住宅ですが、まず自宅部分でのこだわりは?
K:あんまりこだわりはなかったのですが、古くなっても味わいのある雰囲気になっていくようなものにしたいと伝えましたね。
―そのリクエストを受けてFSDはどう応えましたか?
FSD(以下FSD):外観はできるだけ装飾的なものを付けず、シンプルで綺麗に見えるように設計しました。
また、これは賃貸部分にも共通していますが、内装の素材もできるだけ自然なものをというリクエストで、床材は無垢のオーク(ナラ)材に、自然塗料を使っています。おもちゃにも使われるくらいの自然塗料なので自分で手軽にメンテナンスできるのもメリットです。
K:裸足だと気持ちいいし、もっと表情がよくなるね。自分でメンテナンスするのも愛着が湧くし。
壁は友達5、6人呼んで自分たちで塗っちゃいました。壁紙よりニュアンスがいいですよ。
FSD:床材を始め、Kさまご自身で情報収集されながら、打合せのたびに、こちらに投げかけてくださるほどで。そこに応えながら進めていきましたね。
―光の入り方、開放感がある空間ですね。
FSD:ここは南側に高い建物がなく、北も公園で見晴らしが良いので南北の開放性を意識しました。
K:仕事柄、自宅で過ごすことが多いので、風も抜けるし、本当に気持ちが良いですね。
夫婦二人なので、部屋数より寝室の他に広くゆったりできる空間があればいいと考えていたので、ここなら入居者の方たちや友人たちと交流を持ちやすい場になります。
―玄関横のアウトリビングも開放感があり豊かな気持ちになりますね。
K:アウトリビングとは、FSDさんの命名ですね(笑)。
私自身、植物が好きなのでずいぶん置いていますが、公園の木々にも目線がつながるんですよね。
FSD:最初このスペースは部屋にする予定でしたが、高さ制限の関係で実現できないことがわかり、この形になりました。
K:結果的に、私にとっていまや一番気に入っている場所ですよ。
―入居後、使い勝手はいかがですか?
K:お風呂がいいんですよ。陽射しがたっぷり入るので、朝風呂が気持ちいい。窓を開けて、小鳥のさえずりが聞こえてきたりして幸せ。ありがたみを感じます。小野さんに一度入ってくださいと言っているんだけど(笑)。
FSD:(笑)全体的に開放感のある暮らし方を好んでいらしたのは理解していましたし、北側の視界が気にならない立地ということもうまく 利用できました。
―賃貸部分でのこだわりはどこにありますか?
K:私自身が賃貸派で生活してきて、近所づきあいもするタイプだったのですが、隣に住んでいる人がわからない、助け合いもできない環境はよくないと 思うんですね。
なので、同じ屋根の下に住む者同士がほどよい距離感でおつきあいできるような賃貸の在り方を重視しました。
―具体的には?
K:最初から屋上緑化にしようと計画はしていましたが、菜園などを入居者の希望者が利用できると、コミュニケーションが深まる場にもなりますよね。
―入居者の方たちとパーティを開いたそうですね。
K:はい。住んでいる人たちの顔がわかるのはみんなが安心ですよね。みなさんと楽しい時間を過ごせました。
入居者の一人、若い女性は、今まで賃貸に住みながら表札を出したことがなかったけれど、ここなら出せるといって、うちより早く出していました(笑)。
物件をみるのが好きな方もいて、そういう人が気に入ってくれたのならよかったなあと嬉しく思っています。
―入居者の選考はあったのですか?
K:こんな家主がやっている賃貸というのをわかってもらえるように私の方でHPを作ったんです。
FSDさんに紹介してもらった仲介不動産屋さんには、事前にそのHPを希望者に必ず見てもらって、こういうところなら入りたいという人に絞ってもらうよう伝えていました。
結果的に20代から、80代の私の母まで幅広いバランスのいい構成になりました。しかも近々赤ちゃんが生まれる世帯もいる。さまざまな世帯が入っているのは一族みたいで面白いですね。
私が関わっている鴨川の田植えに一緒に行きましょうなんていう話もあがっています。
―部屋の特徴はありますか?
FSD:Kさまのリクエストで、ゆとりあるスペースということと、洗面台はひとつひとつ洗面ボウルから入れて、壁もタイルにするなど、賃貸にはないよう な仕様になっています。
K:借りる人にとっても心地よい住まいなら、引っ越すときにその人が誰かに紹介して、次の入居者になるかもしれないですよね。そういうつながりだったらこちらもなお安心です。
―階下に入居しているお母さまの感想は?
K:86歳になる母は大喜びですよ。すごいきれい好きになってよく掃除しています(笑)。料理もバンバンやっているし、元気が増したようでそれも嬉し い話です。
―賃貸併用住宅を考えている方に一言メッセージを。
K:周辺の賃貸物件の競合に負けないものにするにはやはり、他がしていないことをする。目指すのは常に満室状態。そのためには、入居者が賃貸に望む ようなポイントを抑えるといいでしょうね。
私の場合は、賃貸併用で自分たちも住みますし、単なる貸し借りの関係でなく、程よい近所づきあいのできる賃貸住宅の在り方が大前提でした。
震災時には助け合いが必要ですし、これからはそんな考え方で物件を建てるとみんながハッピーになると思うし、間取りだけでなくコミュニティとしての 在り方は差別化にもなるでしょう。